【化学】熱化学NO.1 化学反応による熱の種類
化学変化には、必ず熱の出入りが伴います。
例えば、炭素が完全燃焼すると、次のような反応が起こります。
この時、Cが1mol燃焼すると、約349kJの熱が発生します。
このように、どのような反応が起これば、どれだけの熱量が発生(吸収)するのかを考えていくのが熱化学の目的です。
因みに、なぜ熱が発生するのかというと、反応の前後で、物質の持つエネルギーの和が異なるからです。例えば、上の炭素の例では、349kJの熱を大気中に放出している、ということは、反応によって物質の持つエネルギーが349kJ減少した、ということです。
また、熱が発生する化学反応を発熱反応、熱を吸収する化学反応を吸熱反応と言います。
1.反応熱の種類
化学反応によって発生・吸収される熱のうち、いくつかには名前が付けられています。
それらは、以下の4つです!
ここで、一つ注意点ですが、今から紹介する熱は全て、基準となる物質1molを反応させたときの熱量(kJ)です。なので、物質2molの反応熱が知りたければ与えられた値を2倍しなければいけません。この点に注意すれば、特に問題はありません。
「どの物質が1molなのか?、何を基準とすればいいのか?」については、問題文で明記されているはずなのでご安心ください。「...炭素の燃焼熱を394kJとします。」のように書かれています。もしそう書かれていたら「ああ、炭素1molを燃やしたら394kJの熱が発生するんだな」と考えてください。
・燃焼熱
・生成熱
・中和熱
・溶解熱
生成熱から順番に見ていきます。
生成熱
生成熱とは、物質(1mol)が単体から作られるときに発生または吸収する熱です。
例えば、塩化銅(Ⅱ)1mol を作るには、銅(Ⅱ)と塩素が1molずつ必要になります。そして、このような反応が起こります。
この反応によって、220kJの熱が発生します。
( の写真)
熱化学方程式で書くと、こうなります。
燃焼熱
燃焼熱とは、物質(1mol)が完全燃焼するときに発生する熱です。
例えば、炭素の燃焼熱は冒頭で書いた通り、394kJです。
この反応によって、394kJの熱が発生します。
熱化学方程式で書くと、こうなります。
( の燃焼の写真)
中和熱
中和熱とは、酸と塩基が反応し、1molの水ができるときの反応熱のことです。
もう一度言います。「1molの水ができるときの熱量」です。
つまり、中和によって発生する水の物質量を基準としているのです。
例えば、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応の中和熱は55.8kJです。
それは、このような反応式で表すことができますが、この時もし水が2mol発生していれば、発生した熱量はとなります。
熱化学方程式で書くと、次のようになります。
酸と塩基、そして右辺の塩の化学式のあとに、水溶液を表す「aq」を付けるのを忘れないでください。
溶解熱
物質が水に溶けるときにも、熱が発生します。
このように、物質1molが多量の溶媒に溶解するときに発生または吸収する熱のことを、溶解熱と言います。
例えば、水酸化ナトリウムが水に溶解するときには、44.5kJの熱が発生します。
状態変化に伴う熱の出入り
いままでは、化学反応による熱の出入りを見てきました。今度は、状態変化(物理変化)によって熱がどのように出入りしているのかを紹介します。
おなじみの状態変化の図です。
このように物質は、個体↔液体↔気体と状態変化をしますが、その間にも熱の出入りが起こっています。
状態変化によって発生(吸収)する熱は以下の3種類です。
・融解熱
・蒸発熱
・昇華熱
水の状態変化を例に説明していきます。
融解熱
物質1molが固体→液体になる時に吸収する熱量です。
水が固体から液体になるとき、約6.01kJの熱が吸収されます。
熱化学方程式では次のように表すことができます。
蒸発熱
物質1molが液体→気体になる時に吸収する熱量です。
水が液体から気体になるとき、約44.0kJの熱が吸収されます。
熱化学方程式では次のように表すことができます。
昇華熱
物質1molが固体→気体になる時に吸収する熱量です。
水が固体から気体になるとき、25.2kJの熱が吸収されます。